[ 前のページ ] [ 目次 ] [ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] [ 9 ] [ 10 ] [ 11 ] [ 12 ] [ 次のページ ]

Debian GNU/Linux 3.0 のインストール (Mips)
章 1 - Debian へようこそ


私たちは、あなたに Debian を試していただけることを嬉しく思っています。 また、Debian GNU/Linux が唯一無比のディストリビューションであることが 分かっていただけるとも確信しております。 Debian GNU/Linux は、世界中から素晴らしいフリーソフトウェアをよりすぐり、 首尾一貫したディストリビューションとしてまとめあげられています。 この集大成は、個々のソフトウェア以上の力を発揮することでしょう。

この章では、Debian プロジェクトと Debian GNU/Linux の概略を紹介します。 Debian プロジェクトの歴史と Debian GNU/Linux についてすでにご存知でしたら、 この章を飛ばしても構いません。


1.1 Debian とは何か?

Debian は、有志の集まりでできている団体で、フリーソフトウェアを 開発し、Free Software Foundation (フリーソフトウェア財団) の理想を 推進することを目的としています。Debian プロジェクトは 1993 年に、 比較的新しい Linux カーネルをもとにした、完全で一貫性ある ディストリビューションの制作のために、Ian Murdock が開発者を広く募ったときに始められました。 献身的なファンたちの小さな一群は、 最初はフリーソフトウェア財団 によって支援を受け、GNU の哲学に影響されていましたが、何年もの後には 800 人もの Debian 開発者 を抱える組織になりました。

Debian 開発者はさまざまな活動に参加しています。例えば、 WebFTP サイトの管理、 グラフィックデザイン、ソフトウェアライセンスの法律的な分析、 文書の執筆、そしてもちろん、ソフトウェアパッケージの メンテナンスです。

私たちの哲学を伝え、Debian が支持する原則を信じている開発者を 引き寄せるために、Debian プロジェクトは、私たちの価値の概略を 述べ、Debian 開発者であるとはどういうことかという指針とする ために、多数の文書を発表しています:

Debian 開発者は、ほかの多数のプロジェクトにも関与しています。 それらのプロジェクトには、Debian 固有のものもあり、Linux コミュニティの一部や全体に関係するものもあります。例えば、

より一般的な情報については、Debian FAQ を参照して下さい。


1.2 GNU/Linux とは何か?

GNU プロジェクトは、Unix™ や、Linux などの Unix ライクな オペレーティングシステムと共に使うための一連のフリーソフトウェア ツールを開発してきました。これらのツールは、 ファイルのコピー・削除といった日常的な作業から、 プログラムの作成・コンパイルや様々なドキュメントフォーマットの 高度な編集といった作業までを可能にします。

オペレーティングシステムは、様々な基礎的なプログラムを含んでいます。 それらによって、コンピュータは、ユーザと交信したり指示を受け取ったり、 ハードディスクやテープやプリンタにデータを読み書きしたり、 メモリの使い方を制御したり、他のソフトウェアを実行したりすることが できます。オペレーティングシステムの最も重要な部分は、カーネルです。 GNU/Linux システムにおいては、Linux がカーネルです。システムの 残りの部分は、他のプログラムでできており、その大部分は GNU プロジェクトによって書かれたものです。Linux カーネルだけでは 動作するオペレーティングシステムを構成できませんので、 多くの人が日常的に「Linux」と呼ぶシステムのことを、 私たちは「GNU/Linux」と呼ぶことを好みます。

Linux カーネルは、 Linus Torvalds というフィンランド人のコンピュータ科学の学生が 1991 年に、Usenet の comp.os.minix ニュースグループに Minix の代替カーネルの初期バージョンを公表したのが始まりです。 Linux International の Linux の歴史ページを 参照して下さい。

Linus Torvalds は、数人の信用できる協力者の助けを得て、 数百人の開発者の仕事を調整し続けています。 linux-kernel メーリングリストにおける議論の すばらしい要約が、毎週 Kernel Trafficで 読むことができます。linux-kernel メーリングリストの より詳しい情報は、 linux-kernel メーリングリスト FAQ で読むことができます。


1.3 Debian GNU/Linux とは何か?

Debian の哲学と方法論と、GNU ツール・Linux カーネル・その他の 重要なフリーソフトウェアとを組み合わせることにより、Debian GNU/Linux と呼ばれるユニークなディストリビューションが形成されています。 このディストリビューションは、多数のソフトウェア パッケージ から構成されています。ディストリビューションに 含まれる個々のパッケージは、実行ファイル・スクリプト・ドキュメント・ 設定情報などから構成されています。また各パッケージには、 そのパッケージに責任を持つパッケージ開発者がいて、 そのパッケージを最新に保ち、バグ報告を追跡し、パッケージにされている ソフトウェアの上流開発者と連絡をとることについて、第一に責任を負います。 大きなユーザベースが、バグ追跡システムとあいまって、 問題がすぐに発見・解決されることを保証しています。

Debian は、細部に注意を払うことで、高品質で安定でスケーラブルな ディストリビューションとなっています。小さなファイアウォールから 科学用途のデスクトップワークステーションやハイエンドネットワーク サーバまで、様々な用途に合わせたインストールが可能です。

Debian を他の GNU/Linux ディストリビューションと区別する最大の 特徴は、パッケージ管理システムです。Debian システムの管理者は、 システムにインストールされるパッケージに関して、ひとつのパッケージの インストールからオペレーティングシステム全体の自動アップデートまで、 完全に制御することができます。個々のパッケージをアップデートしない ように設定することもできます。あなた自身がコンパイルしたソフトウェアに ついて、その依存関係を設定することもできます。

「トロイの木馬」や他の悪意あるソフトウェアからあなたのシステムを 守るために、Debian のサーバは、アップロードされてきたパッケージが 登録された Debian 開発者からのものかどうかを確かめます。 また、Debian の各パッケージは より安全な設定となるように細心の注意が払われています。 もしリリースされたパッケージにセキュリティ上の問題が発生すれば、 その修正版は普通すぐに利用可能になります。 Debian の簡単なアップデートオプションによって、 セキュリティ修正はインターネットを通じて自動的にダウンロード・ インストールすることができます。

あなたの Debian GNU/Linux システムについてサポートを受けたり、Debian の 開発者たちと連絡したりする第一の、そして最良の方法は、Debian プロジェクトが運営する多数のメーリングリストを用いることです (この文章の執筆時点で 90 以上のメーリングリストがあります)。 メーリングリストを簡単に講読するためには、 Debian メーリングリスト講読ページ を訪れて、フォームに必要事項を記入するとよいです。


1.4 Debian GNU/Hurd とは何か?

Debian GNU/Hurd は、Linux モノリシックカーネルを GNU Hurd — GNU Mach マイクロカーネルの上で走る一群のサーバ — で置き換えた Debian GNU システムです。Hurd はまだ完成していません。 現在のところ、i386 アーキテクチャでのみ開発されていますが、 システムが安定してくれば、他のアーキテクチャにも移植される予定です。

詳しくは、Debian GNU/Hurd 移植ページdebian-hurd@lists.debian.org メーリングリスト を参照して下さい。


1.5 Debian を入手する

インターネットを通じて Debian GNU/Linux をダウンロードしたり Debian の 公式 CD を購入したりするための情報については、 入手方法についてのページ を参照して下さい。 Debian のミラー一覧 には、Debian の公式ミラーサイトがすべて載っています。

Debian は、インストール後に非常に簡単にアップグレードできます。 このインストール手順では、システムの設定についてお助けします。 一度インストールがすんでしまえば、必要に応じて このようなアップグレードを行えるようになります。


1.6 このドキュメントの最新版を入手する

この文書には絶えず変更が加えられています。 Debian GNU/Linux システムの 3.0 リリースに関する最新情報については、 Debian 3.0 ページ にて確認してください。 このインストールマニュアルの最新版は、 インストールマニュアル公式ページ からも利用できます。


1.7 この文書の構成

この文書は、初めて Debian をお使いになるユーザのために書かれたマニュアル です。お手持ちのハードウェアの動作に関しては一般的な知識があることを前提と していますが、なるべく専門的な知識がなくてもお読みいただけるよう心がけてい ます。

また熟練したユーザであっても、この文書で、最低限インストールに必要な容量や、 Debian のインストーラでサポートされるハードウェアの詳細など、 参考になる情報を得ることができるでしょう。熟練したユーザの方には、 この文書のあちこちをかいつまんでお読みになることをお勧めします。

基本的にこの文書は、実際に体験するインストールのプロセスに沿って、 順々に説明するように構成されています。Debian GNU/Linux のインストールの 各作業段階と、それに関連するこの文書の各節は以下の通りになっています。

  1. 必要なシステム, 章 2 では、お手持ちのハードウェアがインストーラ のシステム要件を満たしているかどうかを調べます。
  1. Debian GNU/Linux のインストールの前に, 章 3 では、既存のシステムをバックアップし、 Debian のインストールに先だつシステム設計やハードウェアの設定を行います。 もしマルチブートシステムを考えているのでしたら、 ハードディスク上に、Debian 用パーティションを作るための空き 領域を作っておく必要があるかもしれません。
  1. システムインストールメディアの入手, 章 4では、あなたのインストール方法のための インストールファイルを入手します。
  1. インストールシステムの起動, 章 5では、インストーラを起動します。 またこの章では、起動に問題があった際のトラブルシューティングの 手順についても紹介します。
  1. Debian でのパーティション分割, 章 6では、Debian システムのための Linux パーティションを作成します。
  1. カーネルとベースオペレーティングシステムをインストールする, 章 7では、カーネルとペリフェラルドライバ モジュールの設定を行います。CD からのインストールではない場合、 残りのファイルを Debian サーバから入手できるようにするために、 ネットワーク接続の設定を行います。
  1. ``基本システムのインストール'', Section 7.7では、基本システムの自動的なダウンロード・ インストール・設定を行います。
  1. 新しい Debian システムを起動させる, 章 8では、新しくインストールした基本システムを 起動し、いくつかの追加の設定を行います。
  1. パッケージのインストール: 簡単な方法と上級者向けの方法, Section 8.11では、追加ソフトウェアのインストールを 行います。tasksel を使ってコンピュータ「タスク」を 構成するパッケージ群のインストールを行ったり、dselect を用いて長い一覧表から個々のパッケージを選んだり、 apt-get を用いてすでに名前を知っているパッケージの インストールを行ったりします。

システムのインストールが終了したら、次のステップとそれから, 章 9 を読んで下さい。この章では、Unix や Debian に関する情報の 探し方や、カーネルの交換の方法が説明されます。ソースから あなた自身のインストールシステムを構築したい場合は、 ブートフロッピーに関する技術情報, 章 10を参照して下さい。

最後に、付記, 章 12 には、この文書に関する情報や 貢献の方法が載っています。


1.8 この文書には既知の問題があります

この文書は、公式 Debian インストールマニュアルの 初期段階にあるプレリリースバージョンです。 不完全で未完成であること、おそらく間違いや文法上の誤りなどがあることは ご了承ください。 もし ``FIXME'' や ``TODO'' の記述があれば、その節が完全でないことが 著者にとって既知であることが確認できます。 この文書を読んでいただける方はお気を付けください。 あらゆるご協力や提案、また特に修正は歓迎いたします。

この文書の作業バージョンは http://www.debian.org/releases/woody/mips/install にあります。 そのサブディレクトリには、この文書の各アーキテクチャ向けの版や 各言語版があります。

ソースも公開されています。貢献するための情報については、 付記, 章 12 を参照して下さい。提案、コメント、 パッチ、バグ報告 (boot-floppies というパッケージ名を使って下さい。ただし、バグがすでに 報告されていないかどうか、まずチェックしてください) を歓迎します。


1.9 著作権およびソフトウェアライセンスについて

この文書を読んでいる方は、多数の商用ソフトウェアにあるようなライセンス (購入したソフトウェアのコピー 1 部を、1 台のコンピュータで使用できる) はご存知のことでしょう。しかし、 この Debian GNU/Linux システムはそのようなものとは違います。 私たちは、あなたの通っている学校や仕事場にあるすべてのコンピュータに Debian GNU/Linux をインストールすることを勧めます。また、 友達に貸して、彼らのコンピュータにインストールするのを手伝ってあげましょう。 さらには、わずかな制限にさえ気をつければ、 何千部ものコピーを作って売ることも可能です。 なぜなら、Debian はフリーソフトウェアに基づいているからです。

フリーソフトウェアとは著作権を持っていないという意味ではありません。 また、このソフトウェアを含む CD が無償で配布されなければならないという 意味でもありません。フリーソフトウェアとは、 まず、個々のプログラムのライセンスにおいて、 プログラムを利用したり再配付したりする権利のためにお金を払う 必要がないことを意味しているのです。 また誰でも、そのソフトウェアを拡張したり、改造したり、修正すること、 さらにその成果を再配付することが可能であることも意味しています [1]。

このシステムに入っているプログラムの多くは、GNU 一般公有使用許諾 GNU General Public License (GPL) にしたがって 利用許諾されています。この GPL は、プログラムのコピーを配布するときには、 必ずプログラムのソースコードを利用可能にしておくことを要求しています。 これは、ユーザがそのソフトウェアを変更できることを保証するものです。 そのため、私たちは、Debian システムに含まれる GPL 準拠のプログラムの ソースコードをすべて収録しています [2]。

Debian に収録されたプログラムの著作権やソフトウェアライセンスの形式には、 他にも数種あります。それぞれのプログラムの著作権やライセンスは、 一度システムをインストールすれば、 /usr/share/doc/パッケージ名/copyright ファイルを探せば見つけることができます。

ライセンスや、Debian がメインディストリビューションにソフトウェアを 収録する際に用いているフリーの基準に関してより詳細な情報をお求めの場合は、 Debian フリーソフトウェアガイドライン をご覧ください。

最も重要な法律上の注意点は、このソフトウェアが無保証であることです。 これは、このソフトウェアを作成したプログラマらがコミュニティの利益 を考えてのことです。 ソフトウェアは、いかなる目的への利用に対しても保証されていません。 しかし、ソフトウェアがフリーであるゆえに、ユーザには必要に応じて ソフトウェアを修正する権限が与えられます。 また、このようにしてソフトウェアの拡張が誰かによってなされれば、 その利益も享受できます。


[ 前のページ ] [ 目次 ] [ 1 ] [ 2 ] [ 3 ] [ 4 ] [ 5 ] [ 6 ] [ 7 ] [ 8 ] [ 9 ] [ 10 ] [ 11 ] [ 12 ] [ 次のページ ]

Debian GNU/Linux 3.0 のインストール (Mips)

version 3.0.24, 2002/12/18
Bruce Perens
Sven Rudolph
Igor Grobman
James Treacy
Adam Di Carlo